息子の話。
この間の日曜日、息子の剣道の昇段試験(2段)があった。
父親に似ず((^_^;))、もともとお世辞にも運動神経はよくない方だが親が感心するくらい昇段を目指して、熱心に練習に励んでいた。
(不器用なのは父親似で、実直真面目に向かい合っている姿勢は手に取るように察することができた。)
多分、自分でも運動神経がよくないのは自覚しているはずで、だからこそ一生懸命練習に通う姿を陰ながら応援していた。
そして、試験当日。
試験は3つのステップで進められる。
まず、実践。ここでは竹刀を使って、切り返し、そして試合が行われる。
ここに合格すれば、次は木刀を使った型の試験。
ここに合格すれば、筆記試験。
だいたい、最初のステップをクリアすればほぼ合格だ。
2段の受験者は40名くらいいただろうか。
息子は30番目くらいで、それなりに終了。
気になるところはあり親ながら心配になったが、付添で来ていただいた道場の先生も、「8割がた大丈夫ではないか?」
と言って頂いたので、少しは胸をなでおろした。
そして、結果発表。
彼はボードに自分の数字を確認することができなった。
その後、落ちた受験生(4~5人くらいだったか)一人一人に後評の時間があり、彼は彼なりの”演技”で悔しさを隠しながら、先生のところに報告に来た。
先生からは励ましの言葉がかけられ、「よくやった。これから受験勉強に集中して、昇段試験はまた高校に入ってからでも十分間に合うから」と言ってくれていた。
彼はそれは傍にいてわかるくらい 悔しそうな気持を精一杯押し殺しながら聞いていた。
残った受験生達が次のステップに臨む様を横目に見ながら、僕たち親子は会場を後にした。
「何か食べて帰るか?」
息子
「嫌、お腹すいていない。買っていたおにぎりがあるからそれでいい」
私
「俺がお腹すいているから、近くに美味しいうどん屋さんがあるから、食べて帰ろう」
息子
「・・・わかった」
車で移動中、
私
「悔しいだろ」
息子
しばらく黙った後、・・・「うん」
私は イチロー選手がかつて語った「2000本安打は、その倍以上の屈辱があったからこそ達成できた」
という言葉を紹介した。
そして、自分もこれまで たくさんの屈辱を経験したと話した。
仕事ではこれでもかというくらいのたくさんの悔しい思いをしていて、ある意味そういう経験の連続だと語った。
そしたら、息子は声に元気を取り戻して
「仕事以外では、どんな悔しい思いをしたの?」と勢い訊いてきた。
「そうだな~? 」と考えながら、実はすぐには思い出せずに、思い出すのは仕事での辛い思いばかり。
彼は大好きなカレーうどんを注文するも、
最初の一口は旨そうに口に運ぶも、どうもその先の箸が進まない。
どうやら、自覚していないが、まだ緊張感、屈辱感が体に残っているようだった。
残りは自分が食べ、帰路へ。
車中で「思い出したよ。」
と社会人になる前の苦い思い出を二つ話した。
一つは、中学校の野球部での話。
もう一つは、就職試験の話。
野球部ではキャプテンを任させたのだが、そのときに外部から招かれたコーチとの相性が悪かったのか、それまで本命とされていたサードの守備から外野へのコンバート(移動)を命じられ、なかなか外野守備が体になじまず、大きなエラーを練習試合でやらかし、ベンチ入り(試合出場の控え)した経験があった。
就職試験では、受けたほとんどの会社は内定をもらっていたが、一番行きたかった会社に落っこちてしまい、相当なダメージを受けた話をした。
そして、家に帰ってから待ち受けていた犬を連れて大きな広場に出掛けようと誘ってみた。
案の定、気乗りせず、断ってきた。
それを半ば強引に連れだす。
愛犬と私と息子と3人(?)で海の見える広場で、かけ回った後、「あそこ 行こう」と連れて行った場所があった。
彼は ポケットからi-pod を取り出し、そこから広がる広大な景色をカメラに収め始めた。
何を思いながら撮っていたのだろう。
そして、僕ら2人は しばらくお互い無言のまま その景色を ゆったり眺めていた。